貿易事務職は、企業や組織における貿易業務に携わる職種を指します。貿易事務職では、取引先との調整や契約の管理、輸出入書類の作成、輸出入手続の遂行など、国際貿易の法規制や税制などの知識を活用して企業の貿易活動をサポートします。
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貿易事務職とは?
貿易事務職の役割
貿易事務職の役割は、企業の輸出入業務をサポートすることにあります。主な業務には輸出入書類の作成と管理、通関手続きのサポート、コレポン業務、輸送保険の手配、データ入力と報告などがあり、これらの業務を通じて企業が行う貿易活動をより円滑にしていきます。
貿易事務職に求められる能力・スキル
■ メールや書面でのやり取りができるレベルの英語力
貿易事務の業務において、使用される輸出入関連書類が英文であることに加え、納期調整や貨物状況の確認など海外関係者と連携を取る事が多々あります。海外関係者との主な連絡手段はEメールとなりますが、貨物遅延などの緊急事態発生時には電話でのやり取りを行う場合もあります。上級レベルの英語力が必ずしも必要なわけではありませんが、貿易に関する用語の理解や最低限のコミュニケーションを取る為の英語力が求められます。
■ 折衝力・調整力
貿易事務の業務では、顧客や自社各部門との納期調整や通関時の税関対応など、貨物の輸出入を円滑に進める為に多くの関係者と連携・調整を行います。また貨物の遅延や損傷など、緊急事態が発生する事もある事から、状況に応じて柔軟かつ適切に対処する能力が求められます。
貿易事務が活躍する企業・業種の例
貿易事務が活躍する会社は、主に国際的な取引を行う企業が中心となります。業態の例としては、以下のような企業が挙げられます。
企業・業種の例 | 活躍の例 |
メーカー | メーカー(自動車、電子機器、化学製品など)では、自社製品の海外輸出や海外から原材料・部品の輸入が頻繁に行われており、貿易事務職が活躍しています。 |
商社(総合・専門) | 商社は、一般的に様々な商品を取り扱います。特に海外製品の国内販売や、日本製品の国外販売を行う企業では、貿易事務職が活躍しています。 |
物流・フォワーディング会社 | 貨物の輸出入を行う物流企業や貨物輸送の手続き代行をするフォワーダー企業では、貿易事務職がサービスの中心となって活躍しています。また、これらの企業は、貿易事務職のスキルアップを実現させる為の企業として選ばれる事も多々あります。 |
小売業・Eコマース | 大量の在庫を取り扱う小売業やEコーマス(ファッション、食品、家具など)の領域でも輸出入が頻繁に行われています。海外製品の仕入れや海外への商品発送などの場面で貿易事務職の活躍が見られます。 |
輸出入に関わるサービス業 | 貨物保険や貿易コンサルティング、貨物輸送に関するデジタルサービスを提供する企業なども貿易事務職が活躍できる環境を持っています。(実務経験よりも知識が活用される) |
貿易事務職は、これらの企業において国際的な取引を円滑に行うためのサポート役として活躍しています。
貿易事務職の主な仕事内容
貿易事務職では、国際取引に関する様々なバックオフィス業務を主に担当します。以下に貿易事務職の業務をまとめてみました。
貿易・輸出入に関する書類の作成と管理
国際取引で必要となる書類の作成と管理を行います。書類の例としては、船荷証券(B/L)・航空貨物運送状(AWB)、インボイス(請求書)、信用状(L/C)、為替手形、パッキングリスト(荷造り明細書)、原産地証明書などとなり、また輸出入に必要な各種許認可を取得するのも貿易事務の業務に含まれます。
通関手続きのサポート
通関手続きの際に税関に提出する輸出入関連書類の準備を行います。また、関税や消費税の計算や支払いのサポートも貿易事務職の業務となります。通関業務においては通関士が必要となる業務もある為、貿易事務では書類作成のサポートを中心に行います。
貨物輸送に関する手配・調整
船積み、航空便、トラック便など、輸送手段の手配を行います。貨物の輸送スケジュールを調整し、輸送中の貨物の状況をトラッキング・管理します。また、輸送中の貨物が損害を受けた場合に備えて、輸送保険の手配も行います。
顧客対応・コレポン業務
貨物の輸送状況や在庫状況などに関する顧客対応も貿易事務職の業務範囲となります。状況に応じて海外の取引先や物流業者とのメールや電話でのやり取り(英語を使用する事も多い)を行います。また、貨物の輸送中にトラブルや遅延が発生した場合には、問題解決に向け素早く対応します。
データ入力・管理と報告
輸出入や在庫の入出庫情報などに関するデータを管理システムに入力し、必要な報告書を作成します。
業種別での貿易事務
商社・メーカー・小売り・Eコマースなど
■ 仕事の特徴・傾向
- 物流会社・フォワーダー・船会社に比べて輸出入対応の総数は少ない傾向
- 企業の事業範囲に基づき、取り扱い貨物の幅が限定的
- B/LとA/Nの作成業務は稀に行われる
- 貨物スペースの仕入れ業務は稀に行われる
■ 取り扱う書類
P/O、I/V、P/L、S/I、C/O、L/C など
物流・フォワーダー・船会社など
■ 仕事の特徴・傾向
- 商社・メーカー・小売り・Eコマースなどに比べて輸出入対応の総数は多い傾向
- 顧客の商品に合わせて取り扱い貨物の幅が変わる
- B/LとA/Nの作成有り
- 貨物スペースの仕入れ
- カスタマーサービスの兼任も有り
■ 取り扱う書類
I/V、P/L、S/I、C/O、L/C、D/R、B/L、A/N、AWB など
国際物流における貿易事務職の位置づけ
国際物流へ挑戦する為の窓口のような職種
貿易事務職は「専門性の高い事務職」と呼ばれる事もあり、一般業務である事務と専門知識が必要な貿易関連業務の両方に関わる事ができる職種となります。また、国際物流未経験者への募集も一定数あり、これから国際物流業界で専門性を付けていきたい方への出発点のような要素を持つ職種としても知られています。
また、貿易事務職のキャリアアップにおいては、貿易に関する専門性の追求が主な方向性となり、貿易実務担当やサプライチェーン管理、物流管理者、通関士(国家資格)などが上位職としてあげられます。
貿易事務を通して得られる経験
■ 英語を使用した実務経験
輸出入の現場では、取り扱われる書類の多くが英文書類であり、また海外顧客やサプライヤーとのやり取りも頻繫に発生します。その為、貿易事務の業務では日常的な英語の使用が発生し、実務を通して英語力の向上が狙える環境であると知られています。
■ 国内外関係者との調整・交渉業務経験
貿易事務の業務では顧客との納期調整や貨物状況の確認、倉庫部門との在庫の確認など各関係者との調整が行われます。文化背景やコミュニケーションの方法が異なる海外関係者と連携することも多く、貿易事務の仕事では状況に応じた柔軟な対応力が養われます。
■ 国際物流分野での専門性
グローバル化で国境を越えたモノのやり取りが増大する昨今において、物流の重要性は極めて高いものとなっています。また、貿易事務職が専門とする輸出入に関する知識は、これからの物流を支えるサプライチェーンの根幹とも言えます。各国毎に異なった法規制などはあるものの、輸出入のプロセスは国際的に統一されている部分が多いため、貿易事務職はこれからの時代で幅広く必要とされる専門職の一つとも言えます。
まとめ
貿易事務職について解説をさせて頂きました。貿易事務職は「事務職」と呼ばれるものの、輸出入に関する知識や英語能力を活用する機会が多く、通常の事務職よりも専門性の高い職種と言えます。特にグローバル化が進む昨今では、国際物流の重要性が増加傾向にある為、貿易事務職で得られる経験やスキルは長期的に価値のあるものとなるでしょう。