
保税倉庫とは?
保税倉庫とは、輸入された商品を関税や消費税を支払わずに一時的な保管ができる特別な倉庫のことを指します。通常、外国から商品を輸入すると、国内で販売したり使用したりする前に関税や消費税を支払う必要がありますが、保税倉庫ではこれらの支払いを猶予したまま貨物を保管し、必要に応じて仕分けや簡単な加工を施すことが可能になります。この仕組みは、輸送ルートや販売先が決まっていない貨物の管理に利便が良く、海外へ貨物を再輸出する際にも活用されています。
保税倉庫は、港や空港に加えて国境付近の物流拠点に設置される事が多く、世界各地の貨物が一時的に集積する場所として機能します。特にシンガポールや香港のような自由貿易港では、広範囲の貨物を取り扱う保税倉庫が数多く集まり、世界各国への再輸出をスムーズに行えるようになっています。一方、日本国内では、東京や大阪、名古屋などの主要港湾都市や国際空港の周辺に保税倉庫が集まっていて、輸入品の管理や流通の拠点として活用されています。
保税倉庫には種類がある
保税倉庫は使用用途と運営形態から次の5種類に分けられます。
保税倉庫の種類 | 特徴 |
指定保税地域 | 輸出入手続を迅速に処理するため、国や地方公共団体が管理する公共施設の一部を財務大臣が指定したものです。ここでは、輸入許可前の貨物や輸出許可済みの貨物などの積卸・運搬・一時蔵置(原則1か月)が可能で、誰でも自由に安価で利用できます。ただし、長期保管や特定の事業者による独占使用は認められていません。 |
保税蔵置場 | 中継貿易の発展と取引の円滑化を目的に設置された、税関の許可を受けた貨物保管施設です。外国貨物の積卸や保管ができ、保管期間は原則2年ですが延長も可能です。この間、関税の支払いは不要であり、輸入前の貨物を一時的に保管するために活用されます。 |
保税工場 | 加工貿易の促進を目的に、外国貨物を関税なしで加工・製造できる施設として税関の許可を受けた工場です。加工・製造期間は原則2年ですが、延長も可能で、この間に製品を輸出すれば関税はかかりません。保税工場は港湾・空港の近くに限らず国内の各地に設置されており、食品、自動車、化学製品など多様な製品の製造に利用されています。 |
保税展示場 | 国際博覧会や外国商品の展示会の運営を円滑にするために設置される施設で、外国貨物を関税なしで展示・使用することができます。万博会場なども保税展示場としての許可を受けることがあり、輸入手続きを経ずに外国の商品を紹介する場として活用されます。 |
総合保税地域 | 輸入促進や対内投資の円滑化を目的に、保税蔵置場・保税工場・保税展示場などの機能を統合した地域です。ここでは、外国貨物の保管・加工・製造・展示が可能であり、地域内の施設間では税関手続きを経ずに貨物の移動ができます。柔軟な施設配置と手続の簡素化により、貿易活動を支援する総合的な物流拠点として機能します。 |
保税倉庫は国際貿易における物流の効率化を支える重要な役割を果たしており、関税負担を一時的に回避しながら貨物を適切に管理することを可能にしています。特に、輸出入を頻繁に行う企業にとっては、コスト削減や在庫管理の柔軟性を高める手段として、保税倉庫は有効な選択肢の一つとなっています。