
サプライチェーンのグローバル化が進む現代において、輸出入を伴う国境を越えたモノのやり取りは必要不可欠となっています。こういった背景より国際物流が担う役割は大きく企業活動、ひいては社会を維持する上で非常に重要であると言えます。本記事では国際物流とは何か、また国内物流との違いなどを解説いたします。
コンテンツ
物流とは
そもそも物流とは荷主(生産者)から顧客へ商品等を届けるプロセスを指し、単に飛行機やトラックで運ぶだけでなく商品の保管や包装など多くの過程を含みます。一般的には国内・国際を問わず物流は「輸送」「保管」「荷役」「包装・加工」「情報管理」のフローから成り立っています。詳細は「物流業界の全体像」をご覧ください。
国際物流とは
国際物流とは複数の国や地域をまたいで物流活動を行うことを指します。つまり、国境を越えた貨物の輸送・保管・配送などを含む一連のモノの流れを指します。国際物流は国内からの輸出と海外からの輸入の両方に関わるため、海上および航空輸送に係る書類作成や通関業務、仕向地の法令に即した梱包・加工作業などの業務が発生します。国内物流との違いは輸送期間の長さと輸送手段に代表されますが、その他にも下記のようなものが挙げられます。
通関と法規制
国際物流では、輸出入の際に税関で各国の法律や規制に貨物が沿っているかの確認、税金・関税の徴収が行われます。これらの規制は国によって異なるため、取引を行う国に応じて入念にリサーチを行う必要があります。
為替・通貨
国により流通する通貨は異なるため、どの通貨で取引を行うのかなど売買契約の際に取決めを行います。また、自国通貨を売買に使用する通貨に変換する際には為替レートの影響を大きく受けることになります。
リスク
輸送距離が長く、輸送に係る時間が多くなる分、遅延や貨物へのダメージや海賊行為の被害を受けるリスクは高まります。また、政治情勢や天候などにも注意を向ける必要があるなど国際物流には多くの変数が存在します。
国際物流の業務プロセス
貨物の輸送(輸出入・通関)
輸入者および輸出者が契約の合意に至った後、両者はそれぞれ貨物の輸送・受け入れのための手続きに着手します。
輸出(L/C決済の場合)
1. 信用状(L/C)の確認
売買契約締結時に決済方法を信用状決済(L/C決済)とした場合、輸入者が開設した信用状が取引銀行を通じて輸出者へ送られます。信用状の内容が締結した契約に沿っているかを確認します。
2. 貨物積込・通関手続き
信用状に不備がなければ輸出者は納期に合わせてフォワーダー等と協力し、契約時に決めた梱包方法・輸送方法に遵守し、貨物を準備します。この際にインボイス、パッケージリスト、B/L・AWBの作成を行い、税関へ輸出申告をします。
3. 船荷証券(B/L)・航空貨物運送状(AWB)の入手
輸出許可が下りた後、貨物を船(航空機)へ積み込み、B/L・AWBの発行を行います。輸出者は料金を支払い、発行された書類を受け取ります。
4. 代金回収
発行されたB/L・AWBと為替手形を銀行へ提出し、不備がなければ手形の買い取りが行われ、輸出者へ代金が渡ります。
輸入
1. 信用状(L/C)の開設
信用状決済が決済方法として選択された場合、まず輸入者が取引銀行へ信用状開設依頼書を提出します。銀行にて信用状の開設が行われた後、輸出者に信用状が送付されます。
2. 船荷証券(B/L)・航空貨物運送状(AWB)の入手・代金支払い
輸出者が必要書類と為替手形を銀行へ提出後、輸入者は銀行に代金を支払ってB/L・AWBを入手し、書類に間違いがないかを確認。その後、フォワーダー等共に通関や貨物引取業務の準備に移ります。輸出者との取り決めや商品に合わせて、事前に輸入の許可・承認が必要であれば届出を提出します。
3. 通関手続き・貨物引き取り
船会社または航空会社から貨物到着案内(アライバルノーティス)が届いたら、輸入申告を行い、許可が下りたら貨物を引き取ります。
輸出入業務の詳細は「貿易事務のお仕事」をご覧ください。
輸入貨物の輸送
輸入通関を経て引き取られた貨物は契約基づき指定された場所(輸入者倉庫など)へトラック・鉄道などを用いて輸送されます。その際に貨物の検品などが行われ、不備がなければ代金の支払いが行われます。
国際物流に関わる主な輸送手段
自動車
主にトラックを用いた陸上輸送を行う業種です。小回りが利くため、多くの地域に拠点を設け、様々なニーズに対応することが可能です。あらゆる物流領域で必要不可欠であり、消費者の生活を最も近くで支える業種です。
鉄道
貨物列車などを用いて貨物の運搬を行います。レールなどのインフラが整った場所への輸送に限られますが大量かつ自動車よりも早く運べると共に、港に挙げられたコンテナをそのまま運搬できるなど効率面に優れています。
海運
船舶を用いて海上輸送を行います。他の輸送手段と比べて時間はかかってしまうものの、一度に大量の商品の運搬、プラントや列車など高重量物の運搬が可能です。近年ではコンテナ積載効率および移動速度の向上も進んでおり、国際物流の舞台では主要な手段となっています。
空運
航空機を用いて航空輸送を行います。長距離の輸送を短期間で行うことが可能で生鮮食品などの劣化が早い商品や医薬品・化粧品などの高単価商品の輸送に適しています。その分、輸送コストも高く、積載量が低いという弱みもあります。
まとめ
本記事では国際物流の概要、業務プロセスおよび国内物流との違いなどを解説いたしました。リードタイムの長さ、社会情勢や法規制の違いなどの複雑性をはらむことから、高度な専門知識が求められます。単一企業内で完結することは極めて困難であり、豊富なアセットと知見を有する物流企業のサービスを利用することが一般的であり、近年では自社の物流機能をアウトソースする3PL・4PLの需要が高まっています。