
未経験から貿易事務として働き始め、日々の業務を経験していくと、少しずつ自分で対応できる仕事が増えていきます。
最初は分からなかった貿易書類や専門用語も、実務の中で何度も触れることで理解が深まり、「輸出業務を経験した」「輸入手配ができる」「海外との英文メールに対応できる」といった実務経験として積み上がっていきます。
そして、ある程度の経験を積んだ先では、同じ会社で担当できる仕事を広げるだけでなく、これまでの経験を活かして別の会社や職種へキャリアを広げることも考えられるようになります。
今回は、貿易事務として経験を積んだその先に、どのようなキャリアの選択肢があるのかを紹介します。
「未経験」から「実務経験者」になることが最初の大きな変化
未経験から貿易事務を目指していたときは、応募できる求人が限られていた方もいるでしょう。
実務経験を応募条件としている求人では、貿易について勉強していたり、関連する資格を取得していたりしても、実際に輸出入業務を経験している人が優先されることがあります。
しかし、貿易事務として働き始めれば、日々担当している仕事が少しずつ自分の実務経験になっていきます。
例えば、
- 輸出・輸入業務
- 貿易書類の作成・確認
- 船会社やフォワーダーとのやり取り
- 通関や国際輸送の手配
- 納期・スケジュール調整
- 海外拠点や海外取引先とのやり取り
など、実際に担当した業務を「経験」として説明できるようになります。
もちろん、経験年数だけで評価が決まるわけではありません。「何年働いたか」だけではなく、「その期間にどのような業務を担当してきたか」も重要です。
未経験からスタートした方にとって、まず大きな一歩になるのが、この「貿易実務の経験がある」という状態になることです。
経験を積んだ後のキャリアの広げ方
貿易事務として実務経験を積んだ後のキャリアは、一つではありません。現在の会社で担当できる業務を増やしていくこともできますし、これまでの経験を活かして転職することもできます。
ここでは、貿易事務として経験を積んだ後に考えられる、代表的なキャリアの広げ方を見ていきましょう。
同じ会社で担当できる仕事を広げていく
キャリアアップというと転職をイメージするかもしれませんが、必ずしも会社を変える必要はありません。まず考えられるのが、現在の会社で担当できる業務を増やしていくことです。
例えば、最初は書類作成やデータ入力などの一部業務を担当していた人が、経験を積むことで輸出入の手配や顧客対応、海外とのやり取りなども担当するようになることがあります。
輸出だけを担当していた人が輸入も経験したり、海上輸送だけでなく航空輸送にも関わったりするなど、同じ会社の中でも経験の幅を広げられる場合があります。
まずは現在の仕事を通して、自分で対応できる業務を一つずつ増やしていくことも、貿易事務としてのキャリア形成の一つです。
経験を活かして転職する
貿易実務の経験を積むことで、転職するときにも応募できる求人の幅が変わってきます。
未経験で転職活動をしていたときには応募が難しかった「貿易実務経験者」を対象とした求人も、実際に担当した仕事内容や経験年数によっては応募先として検討できるようになります。
例えば、メーカーで輸出業務を経験した人が別のメーカーや商社の貿易事務へ転職したり、フォワーダーで国際輸送の手配を経験した人が別の物流会社へ転職したりすることも考えられます。
また、これまで経験してきた業務を活かしながら、
- 輸出から輸入へ
- 輸入から輸出へ
- 海上輸送から航空輸送へ
- メーカー・商社から物流業界へ
- 物流業界からメーカー・商社へ
など、これまでとは異なる領域へ経験を広げていく選択肢もあります。
さらに、貿易事務で身につけた経験を活かして、別の職種へキャリアを広げていくことも可能です。
具体的にどのような仕事が考えられるのかについては、次の見出しで紹介します。
転職を考える場合は、これまで何を担当してきたのかを具体的に整理しながら、その経験を今後どのように活かしていきたいのかを考えてみましょう。
経験した業務も振り返っておこう
貿易事務として経験を積んでいくと、日々の業務が当たり前になり、自分がどのような経験を身につけたのか意識しなくなることがあります。
将来のキャリアを考えるときは、経験年数だけでなく、輸出・輸入、海上・航空、扱った貿易書類、国際輸送の手配、英語でのやり取りなど、自分が実際に担当してきた業務も振り返ってみましょう。
自分の経験を整理しておくことで、次にどのような仕事やキャリアを目指せるのかも考えやすくなります。
貿易事務から広がる仕事もある
貿易・国際物流の経験は、必ずしも「貿易事務」という職種だけで活かすものではありません。経験を積む中で、自分が得意なことや興味のある分野が見えてくれば、その方向へキャリアを広げていくこともできます。
企業によって職種名や担当する業務の範囲は異なりますが、ここでは貿易事務の経験を活かせる代表的な仕事を紹介します。
輸出入オペレーション
貿易事務として輸出入業務を経験してきた場合、その知識や経験を活かして、フォワーダーや物流会社などでの輸出入オペレーションに携わることもできます。
輸出入オペレーションでは、船会社や航空会社へのブッキング、輸送スケジュールの確認、貿易書類の確認、通関や倉庫との調整、海外拠点とのやり取りなど、貨物を海外へ輸送するためのさまざまな業務に関わります。
メーカーや商社の貿易事務とは立場が異なりますが、これまで身につけた輸出入の流れや貿易書類などの知識を活かしながら、国際輸送についてより専門的な経験を積んでいくことができます。
通関に関わる仕事
輸出入業務を経験する中で、通関業務に興味を持つ人もいるでしょう。通関業者や企業の通関部門では、輸出入申告に関する書類の作成や確認など、通関に関わるさまざまな業務があります。
通関業務に携わるために、必ずしも通関士資格が必要というわけではありません。 通関士資格を持っていなくても担当できる業務があるため、貿易実務の経験を活かしながら通関についての知識や経験を深めていくこともできます。
通関士を目指す場合
通関業務の中でも、通関士として業務を行うためには、通関士試験に合格し、通関士として確認を受ける必要があります。 貿易事務や通関に関わる実務経験を積むことと、通関士になることは分けて考え、通関士を目指す場合は資格取得も含めてキャリアを考えていきましょう。
調達・購買
貿易事務として海外サプライヤーとのやり取りや発注、納期管理、輸入手配などを経験してきた場合、その経験を活かして調達・購買の仕事へキャリアを広げることもできます。
調達・購買では、原材料や部品、商品などを仕入れるために、仕入先の選定や価格・納期の調整、発注、納品までの管理などを行います。海外から調達する企業では、海外サプライヤーとのやり取りや輸入に関する知識が求められることもあります。
そのため、貿易事務で培った海外とのコミュニケーション、発注・納期管理、輸入や国際輸送に関する知識などを活かしながら、商品の輸入手配だけでなく、その前段階となる「何を、どこから、どのような条件で調達するか」に関わる仕事へ担当領域を広げていくことができます。
SCM・サプライチェーンに関わる仕事
貿易事務として経験を積む中で、輸出入だけでなく、商品の調達から生産、在庫、輸送、納品までの流れに関心が広がることもあります。そうした経験を活かして、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関わる仕事へキャリアを広げることも選択肢の一つです。
SCMに関わる仕事では、需要や在庫の管理、調達・生産・物流の調整、納期管理など、商品が必要な場所へ届くまでの一連の流れを考えながら業務を進めます。
貿易事務で経験した輸出入、納期調整、国際輸送、海外拠点や取引先とのやり取りなどを土台に、より広い視点からモノの流れに関わる仕事へキャリアを広げていくことができます。
海外営業・海外営業事務
貿易事務として海外顧客とのやり取りや受発注、納期調整などを経験してきた場合、その経験を活かして海外営業事務へキャリアを広げることもできます。
海外営業事務では、海外の顧客や代理店からの受注対応、納期調整、輸出に必要な書類の準備、社内の営業・生産・物流部門との調整など、貿易事務で経験してきた業務と重なる部分もあります。そのため、輸出入の流れを理解していることや、海外とのやり取り、納期・出荷の調整を経験していることは活かしやすいでしょう。
また、顧客とのやり取りを経験する中で、より商談や提案、取引そのものに関わりたいと考えるようになれば、海外営業を目指すことも選択肢の一つです。
貿易事務で培った実務経験を土台に、海外取引を支える立場から、より顧客やビジネスに近い仕事へと担当領域を広げていくことができます。
貿易事務をキャリアのスタート地点に
未経験から貿易事務を目指したときは、まず採用され、実務経験を積み始めることが一つの大きな目標だったと思います。しかし、実際に経験を積んでいくことで、その先のキャリアの選択肢も少しずつ広がっていきます。
同じ会社で担当できる業務を増やすこともあれば、経験を活かして別の会社へ転職することもあります。また、輸出入や国際物流の専門性を高めたり、通関や調達・購買、SCM、海外営業など、これまでの経験を活かせる仕事へキャリアを広げたりすることもできます。
「未経験から貿易事務へ」は、貿易事務になることだけがゴールではありません。そこから実務経験を積みながら、自分が得意なことや興味のある分野を見つけていくことで、その先のキャリアも見えてきます。
まずは目の前の仕事で経験を積みながら、自分なりの貿易・国際物流のキャリアを築いていきましょう。




