国際物流って何?国際物流の流れや課題を解説

サプライチェーンのグローバル化が進む現代において、輸出入を伴う国境を越えたモノのやり取りは必要不可欠となっています。この背景から「国際物流」が担う役割は年々拡大していて、企業活動や社会を維持する上でなくてはならない存在となっています。今回は、そんな国際物流について解説していきます。

物流ってどんな仕組み?

そもそも「物流」とは、荷主(生産者)から顧客へ商品等を届けるプロセスを指します。物流の一般的なプロセスは、国内物流や国際物流に問わず「輸送」「保管」「荷役」「包装・加工」「情報管理」の流れから成り立っています。物流の現場では、単に貨物(商品)を飛行機やトラックで運ぶだけでなく、貨物の保管や包装、加工など様々な過程が行われています。

また、荷主から顧客へ商品を届けるプロセスと言っても顧客はメーカーから消費者まで多岐にわたります。そのため、物流の中でも更に細分化された物流の種類(「調達物流」「生産物流」「販売物流」「回収物流」「消費者物流」)も存在します。

プロセス 業務の中身
輸送 荷主(生産者)から預かったモノをトラック、貨物船、航空機等を用いて顧客へ届ける機能です。扱う商品や目的地に合わせて輸送手段を組合せ、最適な方法を選択します。
保管 倉庫などで商品を保管することで生産者と顧客の時間的ギャップを埋めるほか、商品の品質を維持する機能です。
荷役 運ばれたモノの積み下ろしや検品をする業務です。「輸送」と「保管」の間のプロセスで出入庫作業も荷役に含まれています。輸出入品などの通関作業もこの荷役プロセスで行われます。
包装・加工 商品を緩衝材やラッピング等で包装する業務です。商品の耐久性向上などの効果があり、輸送中の故障や破損を防ぐためにも重要なプロセスです。また、商品の小分けや、値札などのラベルを貼る業務もこのプロセスに含まれます。
情報管理 上記のプロセスが効率的に行われるようにITやデータを活用して最適な輸送ルートや在庫管理等を行う業務です。人手不足の課題を抱える物流業界においてテクノロジーの活用が加速しています。

国際物流って何?

国際物流とは複数の国をまたいだ物流プロセス(国境を越えた貨物の輸送・保管・配送などを含む一連のモノの流れ)を指します。また、国際物流は大きく国内→海外へ貨物を送り出す「輸出」と海外→国内へ貨物を送り入れる「輸入」の2種類に分かれていて、海上および航空輸送に関する書類作成や通関業務、仕向地の法令に沿った梱包・加工業務などが発生します。

国内物流との違い

国際物流と国内物流との違いは、輸送期間の長さと輸送手段に代表されますが、その他にも下記のようなものが挙げられます。

■ 通関と法規制

国際物流では、輸出入の際に税関で各国の法律や規制に貨物が沿っているかの確認、税金・関税の徴収が行われます。これらの規制は国によって異なるため、取引を行う国に応じて入念にリサーチを行う必要があります。

■ 為替・通貨

国により流通する通貨は異なるため、どの通貨で取引を行うのかなど売買契約の際に取決めを行います。また、自国通貨を売買に使用する通貨に変換する際には為替レートの影響を大きく受けることになります。

■ リスク

輸送距離が長く、輸送に係る時間が多くなる分、遅延や貨物へのダメージや海賊行為の被害を受けるリスクは高まります。また、政治情勢や天候などにも注意を向ける必要があるなど国際物流には多くの変数が存在します。

国際物流に関わる主な輸送手段

国際物流において使用される輸送手段は、貨物の種類、コスト、納期、目的地との距離などに基づいて選択されます。また、主な輸送手段は海上輸送(船舶)、航空輸送(航空機)、陸上輸送(トラックや鉄道)の3種類に分けられます。尚、日本の様な島国では航空輸送や海上輸送が一般的ですが、貨物が移動する国によっては陸上輸送も国際物流の輸送手段となります。

国際物流においては複数の輸送手段が複合的に使用される事もあります。その中でも輸送途中での積み替えを行わずに2つ以上の輸送手段を組み合わせドア・ツー・ドアの輸送を実現させる手法をインターモーダル輸送と呼びます。

国際物流の業務プロセス

貨物の輸送(輸出入・通関)

輸入者および輸出者が契約の合意に至った後、両者はそれぞれ貨物の輸送・受け入れのための手続きに着手します。

輸出(L/C決済の場合)

1. 信用状(L/C)の確認

売買契約締結時に決済方法を信用状決済(L/C決済)とした場合、輸入者が開設した信用状が取引銀行を通じて輸出者へ送られます。信用状の内容が締結した契約に沿っているかを確認します。

2. 貨物積込・通関手続き

信用状に不備がなければ輸出者は納期に合わせてフォワーダー等と協力し、契約時に決めた梱包方法・輸送方法に遵守し、貨物を準備します。この際にインボイス、パッケージリスト、B/L・AWBの作成を行い、税関へ輸出申告をします。

3. 船荷証券(B/L)・航空貨物運送状(AWB)の入手

輸出許可が下りた後、貨物を船(航空機)へ積み込み、B/L・AWBの発行を行います。輸出者は料金を支払い、発行された書類を受け取ります。

4. 代金回収

発行されたB/L・AWBと為替手形を銀行へ提出し、不備がなければ手形の買い取りが行われ、輸出者へ代金が渡ります。

輸入

1. 信用状(L/C)の開設

信用状決済が決済方法として選択された場合、まず輸入者が取引銀行へ信用状開設依頼書を提出します。銀行にて信用状の開設が行われた後、輸出者に信用状が送付されます。

2. 船荷証券(B/L)・航空貨物運送状(AWB)の入手・代金支払い

輸出者が必要書類と為替手形を銀行へ提出後、輸入者は銀行に代金を支払ってB/L・AWBを入手し、書類に間違いがないかを確認。その後、フォワーダー等共に通関や貨物引取業務の準備に移ります。輸出者との取り決めや商品に合わせて、事前に輸入の許可・承認が必要であれば届出を提出します。

3. 通関手続き・貨物引き取り

船会社または航空会社から貨物到着案内(アライバルノーティス)が届いたら、輸入申告を行い、許可が下りたら貨物を引き取ります。

輸出入業務の詳細は「貿易事務のお仕事」をご覧ください。

輸入貨物の輸送

輸入通関を経て引き取られた貨物は契約基づき指定された場所(輸入者倉庫など)へトラック・鉄道などを用いて輸送されます。その際に貨物の検品などが行われ、不備がなければ代金の支払いが行われます。

国際物流が持つ課題と世界の動き

ECの台頭により重要性が増している国際物流ですが、同時に多くの課題にも直面しています。国際物流が持つ課題には、サプライチェーンや法規制の複雑さや環境問題、テクノロジー面など様々な内容が存在します。

世界各国の政府機関や企業はこれらの課題を解決する為に、輸出入・港湾諸手続の簡素化、グリーン物流(炭素排出を削減するためのエコフレンドリーな車両や船舶)やリバースロジスティクスの導入、AIやIOTを使用した業務の自動化など様々な分野に注力を続けています。

スマート税関構想2020

スマート税関構想2020は、日本の税関が推進する取り組みで、税関業務の効率化、透明性の向上、セキュリティの強化を目的としています。スマート税関構想2020では、手続きのデジタル化とペーパーレス化による業務プロセスの効率化やAIや機械学習を活用したリスク管理の自動化に加えて、利用者が手続き状況の確認をできるよう情報の透明化や他国税関とのデータ連携により国際的な規制遵守と効率的な国境管理の実現を進めています。更に高度なセキュリティ技術の導入とコンプライアンス確保のための教育プログラムや監査体制も整備されていたりと、国際競争力の向上と国際貿易のスムーズな流れを支援する取り組みなども組み込まれています。

税関の公式サイト:スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022

まとめ

本記事では国際物流の概要、業務プロセスおよび国内物流との違いなどを解説いたしました。リードタイムの長さ、社会情勢や法規制の違いなどの複雑性をはらむことから、高度な専門知識が求められます。単一企業内で完結することは極めて困難であり、豊富なアセットと知見を有する物流企業のサービスを利用することが一般的であり、近年では自社の物流機能をアウトソースする3PL・4PLの需要が高まっています。